ゆっくりとアイビーの身体をベッドに横たえる。
ベッドが軋む音が静かな部屋に響く。
ジーン「・・・ホントにいいの?」
アイビー「うん。ジーンに・・・抱いてほしい。」
ジーンがゆっくりとアイビーのドレスを脱がせていく。
アイビー「あっ・・・・。」
温かい舌が胸の上を這うと思わず声を漏らす。
その声を聴いたジーンの中で何かが弾ける。
乱暴に服を脱ぎ捨て、アイビーの唇に吸い付く。
アイビー「ん・・・。」
アイビー「ジー・・・ン・・・・待って・・・。」
ジーン「ごめん・・・ムリ。そんな声出されたら・・・たまんない。」
アイビー「んんっ・・・・。」
むさぼる様に唇を求める。
ジーン「ずっとこうしたかった。」
アイビー「(ジーン・・・・。)」
ジーン「入れて・・・いい?」
アイビーが小さくうなずく。
アイビー「ああっ!」
身体の中に入ってくる感覚に思わず声を上げる。
ゆっくりと奥まで入れるとジーンが少しずつ腰を動かす。
アイビー「あ・・・・んんっ。」
熱い舌が絡まる。 ゆっくりと腰を動かしながらも何度も唇を求めてくる。
アイビー「(頭が真っ白になる・・・。ジーン・・・学生時代とは全然違う・・・・。)」
アイビーの頬を涙が伝う。
アイビー「んっ・・・はぁ・・・・。」
腰の動きが徐々に激しくなる。
ジーンの背中にじっとりと汗がにじむ。
アイビーはその背中に必死にしがみついた。
ジーン「愛してる・・・。」
アイビー「あっ・・・・。」
ジーン「愛してる。」
アイビー「(ジーン・・・・。)」
早朝。
ブリッジポートは冷たい雨に濡れていた。
ジーン「ん・・・・。」
ベッドから身体を半分起こして隣にいるはずのぬくもりを探す。
ジーン「アイビー・・・?」
夜。
ブリッジポートの街並みに明かりが灯る。
雨が上がり澄んだ空気が街を潤す。
リリィ「お集りの皆さん。」
リリィ「今夜はEAモデル事務所にとって、設立15周年の記念日となります。」
リリィ「私とパートナーであるアンナのたった二人ではじめた事務所ですが、現在では30人を抱え、15年前には思いもしなかった規模になりました。それもこれも、支えてくださった皆さんのおかげです。」
リリィ「今宵は大いに楽しんでください。」
会場から拍手が沸き起こる。
マロン「アイビーちゃん。」
アイビー「マロンちゃん。」
マロン「15周年おめでとう。」
アイビー「ありがとう。マロンちゃん社長とも付き合い長いから、招待されてたんだね。」
マロン「うんw」
マロン「大女優とか、有名カメラマンとか、普段お目にかかれないすっごい人ばっかりだから僕もう超緊張しちゃうよ~。」
アイビー「あははw ほとんど社長の関係者ばっかりだもんねw」
マロン「そうみたいだね~。」
マロン「ちょっと僕お酒入れないとムリかもw とてもじゃないけどシラフじゃいられないよ。」
アイビー「あははw」
マロン「一番高いお酒飲まなくちゃ。」
アイビー「大丈夫だよ!うちの事務所の子たちも参加してるんだし、マロンちゃん知ってる子多いでしょ。」
マロン「そういえばさっきミーナちゃん見かけたんだった。ちょっと挨拶してくるね。また後で。」
アイビー「うんw 行ってらっしゃい。」
マロン「ミーナちゃ~ん。」
アイビーがマロンの後ろ姿を見つめる。
小さく深呼吸をする。
アイビー「(あと3時間・・・。)」
数時間後。
リリィ「皆さん、楽しんでいただけているでしょうか。」
アンナ「アイビー、もうすぐ出番よ。準備はいい?」
アイビー「はい。」
リリィ「今宵のパーティーの時間も残すところあと少しとなりました。」
リリィ「今日こんなにも大勢の皆さんに集まっていただき、お祝いのお言葉や労いのお言葉をたくさん頂きました。本当にありがとうございます。」
リリィ「最後になりますが、ここでうちの看板モデルであるアイビーからご挨拶があります。」
会場から歓喜の声が上がる。
リリィと入れ違いでアイビーが壇上に上がる。
アイビー「社長、ご紹介ありがとうございます。そして、15周年、本当におめでとうございます。」
アイビー「まだ17歳だった私にはじめて会った社長の一言めは『あなたもうちょっと食べなさい。細いだけじゃモデルは務まらないわよ』。」
会場から笑い声が上がる。
アイビー「子供だった私に、社長や事務所のスタッフさんは多くのことを教えてくださいました。モデルになるための基礎だけじゃなく、人間関係や社会人になるという責任やルールまで。そうやって私はここで大人になりました。」
アイビー「今私がここにいられるのも、社長や事務所のスタッフさん、ファンの皆さん、そして多くの方に支えられてきたおかげです。本当に感謝してもしきれません。」
アイビー「もちろん、モデルをやっていて楽しいことばかりじゃなかったです。」
アイビー「芸能の世界に生きるということは、仕事とプライベートとの境目が曖昧で・・・プライバシーがなかったり、人目を気にしながら生活しないといけなかったり・・・。」
アイビー「でも・・・恋人を事故で亡くしてパパラッチに追われているとき、いつも傍に居てくれた人たち。辛いときに支えてくれて、泣いてるときは胸を貸してくれた。みんな、今の私があるから繋がってこれた人ばかりです。」
アイビー「そして私は今日この日をもって引退します。」
マロン「(え・・・・?)」
会場が静まり返る。
アイビー「いままで支えてくれたたくさんの人たちに感謝しています。本当にありがとうございました。」
アイビー「私はこれから一般人として、一人の女性として生きることを決めました。普通の女性として・・・今までできなかったことやしたかったことを頑張るために。」
アイビー「今後のEAモデル事務所を引っ張っていくのは、今事務所に在籍している一人一人の仲間たちです。そして今夜、新しい仲間が加わります。」
アイビー「キコちゃん。」
アイビーが声を掛けると黒髪の少女が壇上へ上がる。
アイビー「今日から新人としてうちのモデルに加わった、キコちゃんです。ご存知のように彼女は元アイドルKさんと、女優のシーラさんの娘さんです。」
アイビー「彼女にはたくさんの可能性が秘められていると感じています。きっとこれから、モデルだけじゃなくいろんな分野で活躍していけるはずです。皆さんも、彼女のことを応援してあげてください。これからも、彼女とEAモデル事務所をよろしくお願いします。」
会場から拍手が沸き上がる。
アイビー「がんばってね。」
アイビーが小さく声を掛ける。
キコ「はい。」
アイビーが壇上を降りていく。
壇上の上に残された少女が小さく深呼吸をする。
キコ「はじめまして。キコです。」
アンナ「アイビー。」
戻ってきたアイビーに二人が声をかける。
リリィ「お疲れ様。」
リリィ「とてもいいスピーチだったわ。」
アイビー「社長・・・。」
アイビー「もう泣いてもいいですか・・・?」
涙声でアイビーが言う。
リリィ「もうほとんど泣いてるじゃない。」
リリィがアイビーの身体を抱きしめる。
アイビー「社長~。」
リリィ「よく頑張ったわ。」
アイビー「今まで本当にありがとうございました。」
リリィ「よしよし。」
アイビー「うえぇ~。」
リリィ「あんまり泣くと明日腫れるわよ。」
アイビー「明日はもう撮影ないですもん。」
リリィ「そうだったわw」
リリィ「これであなたも晴れて自由よ。」
アイビー「落ち着いたら連絡します。必ず、アダムを連れてまた会いに来ます。」
リリィ「あの子のことよろしくね。」
アイビー「はい。」
リリィ「あなたも幸せになりなさい。」
アイビー「頑張ります。」
リリィ「もう行きなさい。迎えが来てるんでしょう?」
アイビー「はい。じゃあ、失礼します。」
リリィ「お疲れ様。」
アイビー「お疲れ様でした。」
アイビーがドアへと向かう。
マロン「アイビーちゃん!」
マロン「アイビーちゃんっ!引退するって本当?」
アイビー「ごめんね黙ってて。」
マロン「それは別にいいんだけど、一般人になるって・・・復帰はもうないの?」
アイビー「今はそのつもり。」
マロン「でも、僕たち友達だよね!一般人になってもスタジオには顔出してくれるでしょう?また呑みに行ったりしようね。」
アイビー「・・・・。」
マロン「アイビーちゃん・・・?」
アイビー「マロンちゃん、一つだけお願いがあるの。」
マロン「お願い?」
アイビー「ジーンに会ったら伝えてほしいの。」
マロン「ジーンくん?別にいいけど・・・。」
アイビー「私を探さないで、って。」
マロン「え・・・・?探すって・・・アイビーちゃんどこか行っちゃうの?」
アイビー「ごめん。マロンちゃんにはいつか必ず連絡するから。」
マロン「アイビーちゃん・・・?」
アイビー「さよなら。」
マロン「(さよならって・・・・。)」
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